2027年から「防衛特別所得税」が始まると聞くと、副業報酬から引かれる税金が増え、手取りが減るように見えます。
しかし、原稿料や講演料など、現在10.21%で源泉徴収されている一般的な報酬は、2027年になっても合計税率10.21%のままです。防衛特別所得税が1%加わる一方、復興特別所得税が2.1%から1.1%へ下がるため、所得税に上乗せされる割合の合計は2.1%で変わりません。
変わるのは税の内訳です。この記事では、副業で原稿・デザイン・講演などの報酬を受け取る人が、請求書と支払明細のどこを確認すればよいかに絞って整理します。
先に結論:10.21%で引かれる報酬の手取り計算は変わらない
国税庁は、2027年1月1日以後に生ずる所得から防衛特別所得税を適用すると案内しています。同時に復興特別所得税の税率が下がるため、改正前後の合計税率は次のとおりです。
| 時期 | 所得税 | 上乗せ分 | 報酬の合計税率 |
|---|---|---|---|
| 2026年まで | 10% | 復興特別所得税2.1% | 10%×102.1%=10.21% |
| 2027年から | 10% | 防衛1%+復興1.1% | 10%×102.1%=10.21% |
「報酬額に防衛分の1%を直接足して11.21%にする」計算ではありません。防衛特別所得税は、源泉徴収すべき所得税額の1%相当です。復興特別所得税と合わせ、支払額に所得税率×102.1%を掛けます。
報酬10万円なら、2027年も源泉徴収額は10,210円
消費税を含めない報酬100,000円が源泉徴収の対象になる例で比べます。
100,000円×10.21%=10,210円
振込前の手取りは89,790円です。2026年と2027年で源泉徴収額は変わりません。支払明細の税目表示や会計ソフトの名称が変わっても、請求額100,000円、源泉徴収10,210円、差引額89,790円の照合結果は同じです。
ただし、振込手数料やプラットフォーム利用料が別に差し引かれる契約では、実際の入金額はさらに少なくなります。税金だけを見て「計算が合わない」と判断せず、次の式で一度分解してください。
請求額-源泉徴収税-利用料-振込手数料=入金額
1回の支払額が100万円を超える場合も税率構造は同じ
原稿料や講演料などは、同じ人への1回の支払額が100万円を超えると、超えた部分に20.42%を使います。たとえば1,200,000円なら、源泉徴収額は次のようになります。
1,000,000円×10.21%+200,000円×20.42%=142,940円
差引額は1,057,060円です。2027年以後も10.21%と20.42%の合計税率自体は変わりません。国税庁のQ&Aも、講演料と100万円超の原稿料について同じ税率で計算例を示しています。
すべての副業報酬に10.21%を掛けるわけではない
ここがいちばん間違えやすいところです。「業務委託」「副業」という名前だけで、すべての支払いが源泉徴収の対象になるわけではありません。国税庁が代表例として挙げているのは、原稿料・講演料、一定の資格者への報酬、モデル・芸能人への報酬などです。
同じ制作の仕事でも、契約内容や成果物によって扱いが異なることがあります。受取側は、自己判断で請求書の源泉徴収欄を増減させる前に、次の3点を発注者へ確認します。
- 今回の業務を何の報酬として処理しているか
- 源泉徴収の対象額は税抜額か税込額か
- 支払明細に請求額・源泉徴収税・手数料が分けて載るか
「去年も10.21%だったから」という理由だけで判断せず、契約書と実際の業務内容を合わせて確認してください。
消費税を分けて書くかで源泉徴収の対象額が変わることがある
報酬に消費税が含まれている場合、原則は消費税込みの金額が源泉徴収の対象です。ただし、請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、報酬部分だけを対象として差し支えないと国税庁は案内しています。
| 請求書の表示 | 確認する源泉徴収対象額 |
|---|---|
| 報酬110,000円(税込)だけ | 原則110,000円 |
| 報酬100,000円+消費税10,000円 | 100,000円だけを対象にできる |
後者なら源泉徴収税は10,210円です。前者を110,000円に10.21%として計算すると11,231円になります。防衛特別所得税の開始より、請求書上の区分の違いの方が手取りへ直接影響するケースもあります。
2026年末から2027年初めの支払いは何を基準に見る?
国税庁の案内は「2027年1月1日以後に生ずる所得」が適用対象です。給与は支給日が定められている場合、その支給日で判断する例が示されています。一方、副業報酬は契約内容や報酬の確定時期を確認する必要があります。
受取側は、12月の仕事が1月に振り込まれたという事実だけで税年を決めないでください。業務完了日、検収日、支払日、支払明細の日付を残し、発注者がどの年の支払いとして処理したかを確認します。売上を計上する年の考え方は、副業の12月売上はいつ申告するかでも整理しています。
支払明細は4列で確認する
2027年以後も、税目の名前を追うより、金額を4列で照合する方がミスを見つけやすくなります。
| 列 | 確認する内容 |
|---|---|
| 報酬総額 | 契約・請求書どおりか |
| 源泉徴収対象額 | 消費税を含むか、対象業務か |
| 源泉徴収税 | 10.21%、100万円超部分は20.42%か |
| 差引入金額 | 利用料・振込手数料まで含めて一致するか |
支払調書が届かなくても、申告する売上や源泉徴収税をなかったことにはできません。請求書・入金明細・支払明細から年間合計を作る手順は、支払調書が届かないときの確定申告を確認してください。
会社員の給与は2027年分の源泉徴収税額表で確認する
副業の報酬と会社の給与は、同じ10.21%で一律に計算しません。給与は、その年分の源泉徴収税額表へ当てはめて計算します。国税庁は、2027年分以後の税額表には防衛特別所得税と復興特別所得税が含まれるとしています。
副業報酬の支払明細が10.21%のままでも、給与明細は扶養人数や社会保険料など別の条件で金額が動きます。「給与の手取りが変わった理由」を副業報酬の税率だけで説明しないようにしてください。
公式情報の確認先
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」
- 国税庁 No.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」
- 国税庁 No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
まとめ
2027年から防衛特別所得税が加わりますが、復興特別所得税が同じ分だけ下がるため、現在10.21%で源泉徴収される一般的な副業報酬の合計税率は変わりません。報酬100,000円なら源泉徴収10,210円という計算も同じです。
実務では、税率の名前より、対象業務、消費税の区分、100万円超部分、利用料・振込手数料を分けて確認する方が大切です。2027年分の支払明細が届いたら、前年と手取りだけを比べず、請求額から入金額までを4列で照合してください。
※本記事は2026年9月29日時点の一般的な情報を整理したものです。個別の契約や税務判断は、支払者、所轄税務署、税理士などへご確認ください。

