制作を始める前に3万円が振り込まれ、納品後に残り7万円を受け取る。こうした案件では、銀行明細の入金を全部「売上」にすると、納品時の登録と重なりやすくなります。
まず分けたいのは、お金を受け取った日と、仕事が完了して売上を計上する日です。この記事は、個人で動画制作や記事制作を受注し、納品前の入金を帳簿へ入れる人向けです。一般的な発生主義の例で整理します。現金主義の特例を適用している場合や、継続サービスの契約は扱いが異なります。
「着手金」という名前だけでは決めない
納品する仕事の代金を先に受け取ったのであれば、売上にする前の前受金として整理する場面があります。一方、契約時点で完了する別の調査・相談への対価なら、同じ着手金という名前でも内容が違います。
所得税では、実際の入金日や請求書の発行日だけで収入の時期を決めません。国税庁は、取引の内容・性質・契約・慣習によって判定するとしています。事業所得の請負については、目的物を完成して引き渡した日、または約束したサービスを完了した日が原則です。この記事の例も、その条件で納品時に売上を記録します。
請求書の表題より、契約書の業務範囲、納品・検収の条件、返金の条件を先に見てください。「返金しない」と書かれているだけで、受け取り時の売上と即断するのも避けます。何の対価で、どこまで仕事を履行したのかが確認の軸です。
10万円の制作案件を3段階で記録する例
以下は、6月に前金3万円、7月に全体10万円の成果物を納品し、8月に残金7万円が入る想定です。納品時に売上計上する条件で、源泉徴収・消費税・振込手数料を省いた例です。実際の契約に応じて科目や計上日を確認してください。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 6月・前金入金 | 普通預金30,000円 | 前受金30,000円 |
| 7月・納品 | 前受金30,000円+売掛金70,000円 | 売上100,000円 |
| 8月・残金入金 | 普通預金70,000円 | 売掛金70,000円 |
この例で売上は合計10万円です。前金3万円を納品時に取り崩し、残り7万円を売掛金で記録するため、残金の入金では売上を追加しません。売掛金が消えて、預金へ移ります。
一方、6月の3万円を売上、7月の請求書を売上10万円、8月の7万円も売上にすると、同じ仕事から20万円の売上ができてしまいます。自動連携と請求書の手入力が混在する場合は、この重なりを点検します。
請求書と入金を案件番号で結ぶ
- 案件番号を決め、契約書、前金の請求書、最終請求書に共通の番号を残す。
- 入金明細の摘要に「案件A・前金3万円」などと書く。
- 納品・検収を確認できるメールや記録を保存し、計上日を確認する。
- 最終請求書には、代金総額と受領済み前金、今回の請求額を分けて記載する。
- 残金入金後、同じ案件の前受金・売掛金が残っていないか照合する。
請求書の「今回お支払い額7万円」だけを見て売上を7万円にすると、前金分が抜ける可能性があります。売上総額、受領済み金額、未回収額を別々に確認しましょう。
年末に未納品なら、前受金の内訳を残す
12月に受け取った前金の案件が翌年の納品予定なら、年末に残る前受金を案件別に一覧にします。「入金日/相手先/対象業務/受領額/完了予定/売上計上の条件」の6項目があれば、翌年の取り崩しを追いやすくなります。
その年に一部の業務が完了している場合は、全額を翌年へ送ってよいか再確認が必要です。工程ごとの対価や検収が定められた契約では、まとめて一件の納品として扱えないこともあります。
キャンセル・金額変更で困らないために
前金を返す場合、返金の明細と合意内容を残し、既存の前受金と対応させます。売上にしていた取引の取消しや、キャンセル料を受け取る場合は別の判断になります。契約変更後の総額を確認せず、差額だけを雑収入・雑損失で埋めないでください。
運営者は、弥生の自動取り込みを使い、年間の仕訳作業が約8時間から数十分になりました。ただ、取り込んだ取引の分類は自分で確認しています。入金も「前金か売上か」を初回に整理し、誤った分類を次の案件へ引き継がないことが大切です。
まず一件、受領済み前金と未回収の残金を書き出してみましょう。銀行の入金合計と、案件の売上総額が説明できれば、二重計上の発見につながります。
迷ったときの追加確認
入金額が前金の請求額と違うとき
振込手数料や源泉徴収、複数案件のまとめ払いがないか確認します。振込額を見て契約総額を変更せず、前金の請求書と支払側の内訳を合わせます。源泉徴収がある取引は税額も別に確認してください。相手に確認する際は、案件番号、請求額、入金額、差額の四つを用意すると、別案件との取り違えを減らせます。
前金が複数回ある場合
各回を同じ案件へ結び、受領済み前金の合計を出します。納品時に一部だけ取り崩して残高が残っていないか、最終請求書へ全回分を反映したかを確認します。入金順だけで別の売上へ振り分けないようにしましょう。
帳簿の基本は、副業の帳簿付けの手順で確認できます。
確認日:2026年10月7日。参考:国税庁・収入金額とその計算、国税庁・前受金等がある場合の消費税、所得税基本通達36-8(4)・(5)。No.6165は消費税の資料です。所得税の計上時期はNo.2200と所得税基本通達を参照しています。

