仕事用の本を自分の財布で買った。反対に、副業の入金口座から生活費を引き出した。この2つをどちらも『経費』にすると、帳簿の利益がずれてしまいます。
事業主借は個人のお金を仕事へ入れたとき、事業主貸は仕事のお金を個人へ出したときに使う科目です。名前を丸暗記するより、事業の帳簿からお金の向きを見ると整理しやすくなります。
以下は、個人事業の帳簿を複式簿記でつける場合の税込金額による例です。消費税の税区分は省略しています。法人の役員貸付金などとは扱いが異なります。
まずは『どのお金で、何を買ったか』を分ける
| 起きたこと | 使う科目 | 利益への影響 |
|---|---|---|
| 私用の財布で仕事用の本を購入 | 新聞図書費と事業主借 | 仕事の必要経費分だけ利益が減る |
| 私用口座から事業口座へ資金補充 | 普通預金と事業主借 | 売上は増えない |
| 事業口座から生活費を引き出す | 事業主貸と普通預金 | 経費は増えない |
| 事業口座から別の事業口座へ移す | 普通預金同士 | 売上も経費も増えない |
区別したいのは、支払元と支出の目的です。事業用口座から出たお金が、すべて必要経費になるわけではありません。生活費を経費から外す根拠は、国税庁の必要経費の説明でも確認できます。
個人払いの3,300円を記帳してみる
動画の仕事で使う専門書3,300円を、私用の現金で購入したとします。本がその仕事に必要であることを確認したうえで、次のように記帳します。
| 借方 | 貸方 | 摘要の例 |
|---|---|---|
| 新聞図書費 3,300円 | 事業主借 3,300円 | ○○書店/動画制作の参考書/個人現金払い |
ここで貸方を『現金』にすると、事業の現金残高が減ります。しかし、実際に減ったのは私用の財布です。事業用の現金を管理している場合、この違いが残高の不一致につながります。
レシートには書名があっても、仕事との関係までは書かれていません。制作する動画や受注案件との関係を、摘要か保存ファイルのメモに一言添えておきましょう。趣味の読書を兼ねる場合は、購入額をそのまま全額経費にできると決めつけないことが必要です。
生活費の引き出しは自分への給与ではない
事業用口座から生活費として50,000円を私用口座へ移した場合は、借方『事業主貸50,000円』、貸方『普通預金50,000円』です。個人事業主が自分に渡す生活費を給与として費用計上する処理ではありません。
逆に、生活費の口座から事業口座へ50,000円補充した場合は、借方『普通預金50,000円』、貸方『事業主借50,000円』。これは取引先から受け取った報酬ではないため、売上へ入れません。
月に何度も移動するなら、摘要を『生活費振替』『自己資金補充』などに統一すると後から探せます。振込名義だけでは報酬と区別できないことがあるため、自分の口座間の移動だと分かる記録を残します。
あとから立替分を精算したら、経費をもう一度入れない
先ほどの本代3,300円を、後日、事業口座から自分の私用口座へ移して精算したとします。最初の購入時点で新聞図書費は記帳済みです。振込時にもう一度『新聞図書費』を選ぶと、同じ本を2回買った帳簿になります。
事業口座から個人への振替は、事業主貸など、採用している事業主勘定の処理に合わせて記録します。購入記録と精算記録を同じ番号で結び、経費は購入側に一度だけ残すのが確認の要点です。会計ソフトが自動で立替の精算処理を作る場合は、手入力を重ねないでください。
口座の設定が違うと表示される科目も変わる
同じカード払いでも、ソフトに登録したカードが『事業用』か『個人用』かで帳簿への反映が変わる場合があります。画面に『クレジットカード』と表示されていても、帳簿では未払金や事業主借へ変換されることがあります。
弥生の公式サポートは、この口座・カード設定による違いを説明しています。科目名だけを直す前に、口座の管理方法を確認してください。個人口座の仕事分だけを記録する方式と、事業口座の全明細を記録する方式を途中で混ぜると、残高比較の前提も変わります。
月末は事業主勘定の『金額』より『中身』を見る
- 事業主借に、取引先からの報酬が紛れていないか。
- 事業主貸に、仕事の必要経費を誤って入れていないか。
- 資金補充が売上として二重登録されていないか。
- 個人払いの経費と、あとからの精算を二重計上していないか。
事業主借の合計が大きいからといって、その金額がそのまま借金や経費になるわけではありません。科目の性格と個々の取引を分けて確認します。翌年への繰越処理も製品により自動集計があるため、年末に自己判断で全額を費用や売上へ振り替えないでください。
個人払いが多いなら、入力方法を先に揃える
最初に『事業口座は全件、個人口座は仕事分』などの管理ルールを決め、毎月同じ方法で入力すると確認が楽になります。取引が少なければ表計算でも整理できますが、個人払い・事業口座・カード払いが混ざるなら、事業主勘定を含む帳簿を確認できる会計ソフトも選択肢です。
契約前には、実際に多い支払いを数件入力し、個人払いとして登録できるか、仕訳をあとから直せるかを確かめてください。弥生とマネーフォワードの比較記事では、申告方法と必要な機能から選ぶ基準を整理しています。
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ここで整理した取引をソフトへ入力する際は、まず比較記事で必要な機能を絞り、候補製品の画面とサポート範囲を確かめてください。やよいの青色申告 オンラインを検討する方は、利用条件と更新後の費用も確認できます。
仕訳表を読む前に
この記事の借方は仕訳の左側、貸方は右側のことです。借金の有無を表す言葉ではありません。まず「事業のお金が増えたか減ったか」を決め、その相手が売上・経費か、本人との資金のやり取りかを分けると、名前に引っ張られずに判断できます。
確認日:2026年10月16日。参考:弥生公式・個人のお金で立て替えたときの処理。取引例は説明用です。

